彼の心の内

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姉が亡くなり理の心は重く鋭い悲しみに覆われたはずだ。 そのうえ、優羽ちゃんの言葉から、私のこと、両親のこと、将来の自分のことを考え悩み、胸は潰れるように痛かったに違いない。 元気がないように感じていた時もあったものの、それを大きく出すことはなかった。 どれだけ我慢をしていたのだろう。 小さい身体で……。 考えるだけで胸がたまらなく苦しくなる。 現に涙が止まらない。 「舞ちゃん、涙食べてるよ?」 理に笑われてしまうくらいだ。 手の甲で涙を拭うと、隣からハンカチを差し出され無言で受けとり顔を隠した。 啓さんの手は、私の背を擦る。 「お父さん、理君を理由にできなくなっちゃったわよ?」 理が加わる前の話の続きだ。 母が目尻の涙を拭きながら、微笑んだ。 父は「……むむ」と言葉にならない声を出した。 すると理が「望月先生」と彼を呼んだ。 私は瞳だけハンカチから出し、様子を窺う。 「うん」 「“舞ちゃんをください”って言うなら今だよ?」 本当に理は私と啓さんのことを応援してくれているようだ。 私と啓さんが付き合い始めたことが理の心に明るさを取り戻してくれたのが本当なら、嬉しいことではある。 それでも私の幸せをきっと一番に考えてくれているのだというのはわかる。 私の幸せは理の幸せでもあると思っていいだろうか。 咲哉さんのことで苦悩した時にたどり着いた答えを現実に今、実感した気がする。 この時の私は感極まっていた。 啓さんが理のいうことを実行しようとしたかはわからない。 隣で息を大きく吸う音はした。 しかし、それより先に私が「啓さん!」と彼を呼んだ。 彼は目を大きく丸め、私を見下ろす。 まるで予測できないというような表情だ。 「私たち、結婚しよう」 女である私からの公開プロポーズ。 一瞬リビングは静まる。 だが、一番に父が立ち上がり、遅れて母が「まぁ……」と驚きの声をあげた。
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