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啓さんはというと固まっていた。
「いつかは結婚しようねって言ってたでしょう?
それを早めて結婚しよう?」
それでも、合意は得ている。
自信はあった。
しかし、啓さんにしてみれば孤立無援の状態だということに私は気づいていない。
大丈夫だっただろうかと思ったのは、後からのことだ。
啓さんはやはり優しい。
だから、このような状況の中でも私の思いの通りに事を進める姿勢を見せる。
緩んでいた背をピンとさせ、気を付けの姿勢をとった。
「舞さんのお父様、お母様」
啓さんのかしこまった声がリビングに響く。
父は再び腰を下ろし、腕を組んだ。
一応という感じに啓さんを見つめている様子だ。
「舞さんがおっしゃるように、先日舞さんへ私からプロポーズをいたしまして、舞さんから了解をいただきました」
私は「そうなのよ」と割ってしまう。
「将来のことはわかりませんが、身体は強い方です。持病や大きな手術歴、通院歴もありません。舞さんより長生きできるよう心がけようと思っております。
なにより、理さんのことを優先するスタイルをこれからも崩すつもりはございません。
未熟な私ではありますが、舞さんと協力し合って、温かい家庭を築いていきたいと思っております。
どうか私たちの結婚をお許し下さい。
お願いいたします」
まるで直角なお辞儀をする彼の横で、私は「お父さん……結婚してもいいでしょう?」と父を見つめた。
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