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父の顔はますます難しく歪み、口なんて両端とも下に向いている。
思考がまるで読めない。
「ねぇ、お父さん……」
しつこくも父を呼んだ。
父の眉がピクリと動く。
「私は賛成よ。
結婚はタイミングよ。
塾への報告も交際より結婚の方がしっかりしてるわ。
理君にとってもいいんじゃないかしら?」
母は啓さんのことをほとんど知らなかったはずだ。
それなのに、ここまで味方になってくれるのは、間違いなく彼の人柄を気に入ったからだ。
「私は……」
父がやっと口を開いた。
「いいでしょう?」
私は父の方に身を乗り出す。
「結婚は勢いでするもんじゃない」
「お父さん……」
「結婚なんて簡単なものじゃないんだぞ。
わかってるのか?あと何年一緒にいることになると思ってるんだ。
10年どころじゃない、60年70年一緒にいることになるんだぞ。
今はお互いに目先のことしか考えていないだろう。
私はすぐには賛成できない」
父は首を左右に固く振った。
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