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そもそも今日の目的は啓さんを紹介し、優羽ちゃんの母親との出来事を話すことだったはずだ。
それがまったく違う方向に向かっている。
優羽ちゃんの母親のこと、話さなければならないのに今はそれどころでない。
「あ……!」
突然出した私の声に両親が私をハッと見た。
「どうしたの、舞?」
「……いや、なんでも……」
皆、気がついているのだろうか。
理のことに夢中で、啓さんと理が顔を合わせることを忘れている気がする。
「大丈夫……かな?」
啓さんとルームミラー越しに視線がぶつかった。
彼の瞳は心配気だ。
「うん……」
啓さんはわかっているのだろうか。
彼はたぶん一番冷静だろうから、わかっていると思いたい。
きっと、大丈夫だろうと信じて小さく息を吐き、逃がした。
平日で道もすいていたことから、ナビの予定時刻より10分ほど早く着いた。
病院の入り口でとめてもらい、駐車は彼に任せ両親と院内へ駆け込む。
受付に行くと処置室へ案内され、そこには点滴を打ち横になる理がいた。
「理……」
理に駆け寄ると、理の瞳がゆっくり開く。
「舞ちゃん……?」
彼の視界がぼやけている気がする。
「大丈夫?」
理が小さく頷くと、背後から理の学校の教師が「こんにちは。ありがとうございます」と顔を覗かせた。
一応頭を下げたが、母に対応を任せ私は理の手を握る。
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