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「理、平気?」
理はだるいのだろう。瞳を“大丈夫”というように大きく瞬かせるだけだ。
「ごめんね、話さなくていいよ」
すると理が瞳を閉じた。
話さなくていいと言った私だが、瞳の色が見えないと不安になる。
“お姉ちゃん、理を連れていかないよね……”
無意識に浮かぶ涙が溢れぬよう、目元に力を入れる。
理の手も少しだけ握りしめてしまう。
「理君辛そうね」
「……うん」
母の声に一瞬理が瞳を開けたがすぐに閉じた。
「ノロウイルスでしょうって」
母が私の背を“トントン”と優しく叩き、隣から理の頭をゆっくり撫でた。
「……ノロウイルスって……」
なんとなくの知識はある。
しかし、聞いて安心したかった。
「急性胃腸炎を引き起こすウイルス性の感染」
「すぐに治るやつだったよね?」
「早ければ明日には回復するそうよ」
「そう、よかった……」
「点滴をすればだいぶよくなるみたいよ」
本当だろうか。
姉が亡くなる前たくさんの管をつけられていたのを思い出す。
“ヤバイ、泣きそう”
ただの嘔吐下痢症なのに。
「お母さん、少し代わって」
ただ、理の前で泣くのはよくないと、顔を伏せ部屋の外へ出ようとした時、入室しようとした啓さんに抱き留められた。
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