彼の心の内

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浴室からシャワーの音がする。 「啓さーん!」と浴室の扉をノックすると、彼が顔を出した。 髪や肩、顔が美しく濡れている彼を目にして、一瞬自分が何をしに来たのか忘れる。 彼の色素の薄い鍛えられた身体は好きだ。 何度も身体を重ねるうちに、彼の身体に対し恥ずかしさより愛しさの方が勝るようになり、抱きつきたい気持ちになるのはよくあること。 「どうしたの?」 シャワーを止め、微笑む彼に「あ、えっと何しに来たんだっけ?」と質問返した。 「えぇ?」 「あ、そうだ、着替えだ、着替え持ってきたの。ここに置いとくね」 チェストの上に着替えを乗せると、「ありがとう。ちょうどよかった。今、あがろうとしていたところなんだ」と彼が出てくる気配を見せた。 「え、今?」 「ダメ?」 「ダメじゃないけれど、今は両親が近くにいるし……」 「……えぇ?」 不思議そうに首を傾げる彼に「啓さんに抱きつきたくなっちゃうかもしれないから、私がいなくなってから出てきて」とお願いする。 それには啓さんは驚いた顔をしたけれど、すぐに“ぷはっ”と吹き出した。 「えぇ?」 今度は私が首を傾げる番だ。 しかしすぐに変態的発言をしたことに、気がついた。 「ごめん、変なこと言った」 焦るけれど、彼が首を伸ばし私の唇にキスを落としたので気が逸れる。 「お母さんたちいるのに……」 上目遣いに見つめると「内緒ね」と唇に長い指を立てた。 その仕草は潤う彼によく似合い色っぽい。 ここが自宅でなければしばらく見ていたいくらいだった。
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