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父はクシャクシャっと頭を掻き、ドスッと音が鳴るくらいソファに腰を沈めた。
その際、背をいっぱいにソファに沈めていた理の身体が揺れる。
「悪い、理。大丈夫か?」
理に気遣う余裕はあるよう。
もしかすると意識を逸らしたいのかもしれないけれど。
「うん。
ねぇ、おじいちゃん、カッコいいね」
「……カッコいい?」
「プロポーズの言葉カッコよかった。おじいちゃんしっかり者だもんね。
おばあちゃんをずっと大切にしてきたんだね……」
「そうなのよ、おっちょこちょいなおばあちゃんを守ってきてくれたのよ。カッコいいでしょう」
父の顔がさらに赤くなる。
「もっとおじいちゃんとおばあちゃんの昔話聞きたいな」
理は瞳を緩め、父を見つめている。
父はというと気まずそうに“んんっ”と咳払いをし「別に楽しい話はないよ」と祖父口調で答える。
「それならおばあちゃんが聞かせてあげましょうか?」
父が「おい!」と声をあげる。
「ふふっ、もう照れ屋ねぇ、おじいちゃんは」
「何が照れ屋だ。
そもそもどうしてあんな話……」
父は自ら巻き戻してしまったと思ったのか、また大きな咳払いをした。
「舞!」
恥ずかしさを紛らすように呼ばれた名は大きくリビングに響く。
「はい」
「君も」
「はい」
私も彼も背をピンと伸ばした。
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