彼の心の内-2

2/22
前へ
/22ページ
次へ
父はクシャクシャっと頭を掻き、ドスッと音が鳴るくらいソファに腰を沈めた。 その際、背をいっぱいにソファに沈めていた理の身体が揺れる。 「悪い、理。大丈夫か?」 理に気遣う余裕はあるよう。 もしかすると意識を逸らしたいのかもしれないけれど。 「うん。 ねぇ、おじいちゃん、カッコいいね」 「……カッコいい?」 「プロポーズの言葉カッコよかった。おじいちゃんしっかり者だもんね。 おばあちゃんをずっと大切にしてきたんだね……」 「そうなのよ、おっちょこちょいなおばあちゃんを守ってきてくれたのよ。カッコいいでしょう」 父の顔がさらに赤くなる。 「もっとおじいちゃんとおばあちゃんの昔話聞きたいな」 理は瞳を緩め、父を見つめている。 父はというと気まずそうに“んんっ”と咳払いをし「別に楽しい話はないよ」と祖父口調で答える。 「それならおばあちゃんが聞かせてあげましょうか?」 父が「おい!」と声をあげる。 「ふふっ、もう照れ屋ねぇ、おじいちゃんは」 「何が照れ屋だ。 そもそもどうしてあんな話……」 父は自ら巻き戻してしまったと思ったのか、また大きな咳払いをした。   「舞!」 恥ずかしさを紛らすように呼ばれた名は大きくリビングに響く。 「はい」 「君も」 「はい」 私も彼も背をピンと伸ばした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加