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「これから塾へ行き望月先生にもお詫びしてまいります」
優羽ちゃんの父親がそう言ったのは、家を出た後だ。
私と母は彼を見送るために家の外まで出ていた。
「そうですか……」
啓さんも申し訳なく思うだろうが、少しは気が休まるだろうか。
優羽ちゃんの父親を“アルマ”の駐車場まで母と送り、私は複雑な思いを抱えバイトに戻った。
「ごめんね、抜けさせてもらって……」
今日は郁ちゃんが休みなので、迷惑をかけてしまった。
直に頭を下げる。
「いいよ。あの金持ちそうなおっさん誰?」
「あぁ……塾で理が一緒だった人」
「ふーん。なんだ、俺はてっきり彼氏絡みかと思ったけど……」
「……え?なんで?」
私は少しも結び付かないんですけど……と、直を見つめる。
直の瞳が気まずそうに揺れた。
しかしすぐ、いつもの彼の強い瞳を取り戻す。
「なぁ、舞と彼氏上手くいってんの?」
「え?なんで?」
瞳を瞬かせる。
「最近舞休みの日、家にいるだろ?」
「あぁ……まぁね」
直が定休日にパンを届けてくれるので、家にいる私と会う。
啓さんと距離を置いていることを言わず苦笑すると、直がますます真剣な顔になり「なぁ……」と、私に顔を近づけた。
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