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啓さんはきっともっとその思いが強いのではないだろうか。
啓さんの瞳が私の思い込みのせいかもしれないけれど、頼りなく映る。
「優羽ちゃんは?今日は来てないの?」
啓さんが首を縦に振り「うん、休ませると連絡があったよ」と答えた。
「……そう」
優羽ちゃんはどう思っているのだろう。
三年ほど一緒に頑張ってきた仲間と、今さら別れたいだろうか。
「優羽ちゃん、嫌がってるんじゃない……?」
啓さんが瞳を僅かに細めた。
「やっぱり話し合った方が……」
「母親の希望で移ると決めたんだろう。話し合う必要はない」
父はそう言うが頷けない。
無言で返す。
「成績が上がらず塾を変える生徒もいると聞くぞ」
それは私も知っているが、残り少ない時期になって変えることはあるだろうか。
「少なくとも他人と比較することも減るだろうし、成績の伸びも期待できる。
彼女にとってはいいことなんじゃないか?」
「そうなのかな……」
「あぁ」
「でも私たちのことを知らなければ移動することはなかったんだよ……」
啓さんは困り顔。唇を小さく萎めている。
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