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「優羽ちゃんの母親ともう一度話せない?」
「舞、よしなさい」
父が後ろをハッと見つめた。
「だって、優羽ちゃん可哀想」
「きっとあちらも色々考えたんだろう。その結果だ。
話がしたいなら連絡を父さんにしただろうからな」
「そうだけど……」
頬を膨らませる。
「舞」
「でも理も気にしないかな……。
きっと気にするよ」
父の瞳がほんの少し揺れた。
「受験は自分との戦いだ。全く気にしないとは言えないが、理だってそれをわかっているはずだ」
「……」
「あちらはあちらのやり方で頑張ろうと決めたんだろう。
もう気にすることはない」
父はそう言うが、私は納得できなかった。
しかし優羽ちゃんの母親を待ち伏せする勇気もなく、理のお迎えの時間になる。
理の退出時、啓さんが出てくることはなかった。話を聞きたかったけれど我慢し、理にテストの出来具合を聞く。
それから私は優羽ちゃんのことを何も知りません、と装いつつ「そういえば今日、おやすみの子いた?」と質問した。
「優羽ちゃんが休みだったよ」
「へぇ」
理が私を見つめるのが視界の端に映る。
「風邪かなぁ……」
「どうだろうね」
理はまだ知らないはず。
私は「理も気を付けなきゃね」と笑みを浮かべ、「あ、前の車の後ろ姿怒った顔っぽい、見て見て」と話を変えた。
前を走る車のテールランプの形が怒った人の瞳に似ていた。
「本当だ」
クスッと笑う理にホッとする。
“ごめんね、理”
心で謝りつつ、笑顔を乗せた。
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