真っ直ぐな思い-2

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「優羽ちゃんの母親ともう一度話せない?」 「舞、よしなさい」 父が後ろをハッと見つめた。 「だって、優羽ちゃん可哀想」 「きっとあちらも色々考えたんだろう。その結果だ。 話がしたいなら連絡を父さんにしただろうからな」 「そうだけど……」 頬を膨らませる。 「舞」 「でも理も気にしないかな……。 きっと気にするよ」 父の瞳がほんの少し揺れた。 「受験は自分との戦いだ。全く気にしないとは言えないが、理だってそれをわかっているはずだ」 「……」 「あちらはあちらのやり方で頑張ろうと決めたんだろう。 もう気にすることはない」 父はそう言うが、私は納得できなかった。 しかし優羽ちゃんの母親を待ち伏せする勇気もなく、理のお迎えの時間になる。 理の退出時、啓さんが出てくることはなかった。話を聞きたかったけれど我慢し、理にテストの出来具合を聞く。 それから私は優羽ちゃんのことを何も知りません、と装いつつ「そういえば今日、おやすみの子いた?」と質問した。 「優羽ちゃんが休みだったよ」 「へぇ」 理が私を見つめるのが視界の端に映る。 「風邪かなぁ……」 「どうだろうね」 理はまだ知らないはず。 私は「理も気を付けなきゃね」と笑みを浮かべ、「あ、前の車の後ろ姿怒った顔っぽい、見て見て」と話を変えた。 前を走る車のテールランプの形が怒った人の瞳に似ていた。 「本当だ」 クスッと笑う理にホッとする。 “ごめんね、理” 心で謝りつつ、笑顔を乗せた。
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