真っ直ぐな思い-2

4/22
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
22時前、啓さんが我が家を訪ねてきた。 恋人を訪ねる。そんな甘いものではなく、今日の状況報告だ。 理は母と二階に上がらせているのでいない。 しかしあまり遅くなってはいけないと、啓さんは優羽ちゃんの母親が一人で来て、個別指導の手続きを済ませたことを手短に伝えた。 父の反応は昼間と同じだ。 私もそう。 塾側もとりあえずの解決に胸を撫で下ろしている様子らしい。 啓さんの立場は大丈夫なのだろうか……。 父に“これ以上は踏み込むな”と注意され、とりあえず了承した私は、帰る啓さんを見送ると言って外に出た。 少し二人で話したかったのだ。 彼はその気持ちに気づいており、私を車に誘った。 二人きりになったのに、彼に抱きつく甘い雰囲気にはならない。 「私たちのこと、何か言ってた?」 啓さんが苦笑いする。 「少しだけ……」 「そう……」 「啓さんは塾では色々言われてない?大丈夫?」 彼を下から見つめると「うん、大丈夫。心配しないで」と優しく微笑まれた。 本当だろうか。 怪しんでしまう。 「……ごめんね」 「舞は悪くないよ。僕が……ごめん」 少しの間しんとする。 「ねぇ、啓さん」 彼の腕を少し引く。 「うん?」 「私たち、理の受験が終わるまで会うのを控えた方がいいかな……?」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!