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優羽ちゃんの父親は50代半ばといったところだろうか。
優羽ちゃんの母親より10ほど上に見えた。
彼をリビングへ誘うと、母が「どうぞお座りになってください」とソファに腰をおろすよう薦めた。
私は素早くお茶を出す。
優羽ちゃんの父親の真向かいに父、その横に母、私は双方の間のソファに腰をおろした。
するとすぐ、優羽ちゃんの父親が私たち家族を交互に見つめ「本日は妻のことでお詫びにまいりました」と言い頭を深く下げた。
私は「え……」と、彼を見つめ母を見た。
母の視線と視線がぶつかる。
私も母も怒られると思っていたのだから、驚き瞳が大きくなる。
「この度は妻が非礼な振る舞いを演じてしまいまして、誠に恥ずかしく思います。
すべて、私の至らなさが招いた結果です。
多大なご迷惑をおかけいたしまして、心から申し訳なく、深くお詫びいたします」
白髪混じりの髪が頼りない彼の顔を隠す。
「……頭をお上げください」
父の声に優羽ちゃんの父親がゆっくりと顔を上げ、父を申し訳なさ気に見つめた。
私も謝るべきだろうか。
思い悩むがすぐに優羽ちゃんの父親が口を開いた。
「実は現在私と妻は別居に近い形をとっておりまして、今回の騒動のことを昨日初めて知りました」
「……そうなのですか?」
てっきり知っていると思っていたため、私の驚きに「えぇ、お恥ずかしながら……」と彼は言い口の端を気まずそうに下げる。
「私に教えてくれたのは娘です。
娘から教室を変わったこと、妻が担任の講師とあなたに怒りトラブルを起こしたことを聞き、驚きました。
すぐに妻と話し合い、実は本日も謝罪に連れてまいりたかったのですが……。
度重なる失礼、本当に申し訳ありません……妻は意固地になっており、本日は私だけまいりました」
まさか夫婦間で話し合いがないまま教室を移動させていたなんて思いもしなかったため驚きだった。
それも別居中という複雑な様子は優羽ちゃんの母親からは想像できなかったことだ。
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