運命の糸

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「舞ちゃん、信号青だよ」 「あ、ごめん!」 いけない。 心は“どうすればいいのだろう”という戸惑いでいっぱいだ。 「大丈夫?」 「うん。ぼんやりしてただけ」 「帰り気を付けてよ」 視界の端に理の心配気な顔が入り込む。 いけない。 ぼんやりしていたなんて言ったりして、理が心配するに違いないのに。 「大丈夫。超、気を付けて走るよ」 “あはは”と笑ってみたけれど、理はしばらく私を窺っていた。 昼間の直の告白には驚いた。 まさかの出来事で、しばらく掴まれた腕も振りほどけなかった。 あれからしばらくして、郁ちゃんが直を呼びに来たことで中断されたが、あのまま二人きりの時間が続いたならどうしていただろう。 二度目の休憩で、直が話しかけてくることはなかった。 店内でも普段の感じに接してきたから、何もなかったフリをして、バイトを終えた。 直に気持ちが傾くことは今のところない。 それでも誰かにこの心のモヤモヤを吐き出したい。 危険だ。 今、私は塾に理を送っていっているところである。 もしかすると、啓さんに会えるかもしれない。 普段ウキウキする心は今日は怖さ混じりだ。 塾の駐車場に着く。 私は啓さんをいちはやく見つけるのが得意。しかし今日は姿が見えない。 そういう日もあるけれど、今日は“避けられている?”と疑ってしまう。 悪いほうにしか考えられない。
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