46人が本棚に入れています
本棚に追加
「舞ちゃん、信号青だよ」
「あ、ごめん!」
いけない。
心は“どうすればいいのだろう”という戸惑いでいっぱいだ。
「大丈夫?」
「うん。ぼんやりしてただけ」
「帰り気を付けてよ」
視界の端に理の心配気な顔が入り込む。
いけない。
ぼんやりしていたなんて言ったりして、理が心配するに違いないのに。
「大丈夫。超、気を付けて走るよ」
“あはは”と笑ってみたけれど、理はしばらく私を窺っていた。
昼間の直の告白には驚いた。
まさかの出来事で、しばらく掴まれた腕も振りほどけなかった。
あれからしばらくして、郁ちゃんが直を呼びに来たことで中断されたが、あのまま二人きりの時間が続いたならどうしていただろう。
二度目の休憩で、直が話しかけてくることはなかった。
店内でも普段の感じに接してきたから、何もなかったフリをして、バイトを終えた。
直に気持ちが傾くことは今のところない。
それでも誰かにこの心のモヤモヤを吐き出したい。
危険だ。
今、私は塾に理を送っていっているところである。
もしかすると、啓さんに会えるかもしれない。
普段ウキウキする心は今日は怖さ混じりだ。
塾の駐車場に着く。
私は啓さんをいちはやく見つけるのが得意。しかし今日は姿が見えない。
そういう日もあるけれど、今日は“避けられている?”と疑ってしまう。
悪いほうにしか考えられない。
最初のコメントを投稿しよう!