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「てへへ、まあそう言った次第で、ずっと昨日の対戦に思いを馳せていたんだ。私が死んだ理由と原因を考えてたんだ。上達したいからね」
「フレーズだけ切り取ると剣呑ねぇ」
そこで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ま、もう今年は受験なんだしゲームはほどほどにしなさいよ」
自分の席に帰って行く李緒をたははと曖昧な笑みで見送った。
授業の準備をしながら昨日の対戦に思考を戻して反省点を洗い出す。午後の授業、眠くなるような世界史を聞き流しながら私は昨日死んだ理由を考察する。
とはいえ、李緒の言う事も尤もだ。手だけは動かして頭の中を通り抜けていく禿頭の世界史教師の言葉をノートに留めておく。後で見返せばまあいいだろう。
ゲームならば失敗してもそれっきり、新しい対戦では真っ新な状態で始められるが人生はそうはいかない。失敗すればしただけの失点を背負ってゲームを続けさせられる。ニューゲームもリセットもない。現実の人生は仮想現実の殺し合いよりもよっぽど難易度が高いと思う。
「『葉隠』だ!!」
「どうした急に!?」
帰りの電車の中でずっと頭の底にへばりついていた物の正体に気が付いて私は思わず声をあげた。
「さっき李緒と話したじゃない。私が昨日殺された話」
「うん。公共の場所だから剣呑なキーワードは慎もうか」
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