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何も言わずに私を指した。顔が熱い。
「え?なんだって」
そこで李緒はライトノベルの主人公のような事を言った。
「その、武士道と私の最近の趣味とが……」
後半の言葉を濁らせると李緒は楽しげに繰り返した。
「え?なんだって?」
「だから自分の死を想うという意味で私と武士道とが……その、言葉の上で似てるとか思っちゃったりぃ……」
そこで李緒はえぇーと大げさに口許に手を当てた。
「たかがゲームに嵌ってるだけのあんたが常在戦陣の武士道の覚悟と似てるとか、そんな。いやいや奈津美さん。まさかそんな自意識過剰な」
驚いたような表情だが、口元が楽しげな形に歪んでいる。
「ハイ。ワタクシが厚かましかったデス」
微かに込み上げてきた羞恥心から肩を落とした。
「ぅう、辱められた」
ぼそりと零すと李緒はいよいよ呵呵大笑。
「へっへっへ、お嬢さん。良かったんならまた遊んでやるぜ」
「……李緒オヤジっぽいよ」
家に着くと同時に制服のままベッドの上に体を投げ出した。
じっとりとした疲労感が倦怠感を伴って眠気を誘発した。
「……宿題しないとなぁ」
自分でもあまりの空々しさに苦笑してしまった。
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