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昼休みに李緒の言った通りだ。遊び呆けていられるのもあと僅かだ。今学年は受験がある。その前に一学期の期末試験がもう再来週に控えている。流石に一週間前になったらゲームは封印して机に齧りつくことになるだろう。赤点を取って補習で夏休みが潰れるのは御免被りたい。それでなくとも夏には予備校に通い夏期講習を受けるよう父母に言われているのだ。
好きな事が許される時間はこの先、目減りし続けるだろう。
そこまで考えて溜息を吐いた。
「好きな事だけやって生きていければいいのに」
無論、それは荒唐無稽な夢物語だ。作用に反作用が伴う様にどんな行為も負荷は免れない。逃避し続けた先に楽園などある筈がない。
行く末は野垂れ死にだろう。そうなれば私は私が死んだ理由に思いを馳せることも出来なくなる。
「結局、真っ当に地道にやってくしかないのかなぁ……」
ゴロンと寝返りを打ってスマホを弄り始める。SNSを開いて顔も知らない知人たちの呟きを流し見る。依然、頭の中は昨日の対戦の反省点を見直そうと、それでいっぱいだ。
子供の頃からゲームが好きだった。いや、初めは人間が嫌いでそこから逃げ出したかっただけなのかも知れないが。とにかく、幼い時分より友達とままごとをするよりも家で一人で祖父の時代小説を読んでいるか父のゲームで遊んでいることが多かった。祖父も父も一人娘の私に甘かったので私の嗜好をむしろ喜んだ。母には女の子らしくないと心配を掛けたようだったが、まあ現代はジェンダーフリーの時代なので赦して頂きたく候。
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