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だがそんな正論では私の体はピクリとも動かなかった。代わりに頭の中で進路に想いを巡らす。一番、正道なのがこのまま適当な大学に進学してそのまま適当に余暇が多そうなところに就職する事だろう。これなら自分の楽しみであるゲームをする時間も確保できそうだ。苦手な人付き合いも、人類種の繁殖という命題を自分以外の70億の同胞に委ねるのなら最低限で済みそうだ。しかし半面でどうあがいても余生の半分以上を拘束されることになるだろう。それはただただ気が重い。大学の間は遊べそうなのが唯一の救いか。
「ん?」
流し見していたタイムラインにふと気になるコメントを見つけて声を洩らした。
それは企業のプロモーションだった。専門学校の広告らしい。その一文が私の興味を引いた。
『民倭声優・アニメ専門学院、e-sports専門科入学生募集』
e-sports。つまりはゲームのプロであるプロゲーマーの専門学校。
プロゲーマー。その言葉が私の胸の中に花火となって咲いた。
ああなんて甘美な響きだろう。ゲームだけをやって生きていけるなんて。うっとりとした思いで閉じた瞼の裏で希望が稲光の様に瞬いた。
きっとこれは天命だろう。私はこうなるために生まれてきたのだと、魂魄の喝采と共に確信する。
そもそも、この苦界で何故やりたくもない事をやらなければいけないのだ。人間は好きな事だけやって生きていけばいい。その上で優劣が生じるのは避けられない事なのだろうが、そこは頑張ればいいだけだ。
好きな事をやっているのだ。
好きな事くらいは無限に頑張ればいい。そんなものは苦痛ではないのだから。
ああそうだ。毎日毎日、自分の殺され方を、自分が死んだ理由を精査することが果たして苦痛だっただろうか。
要は答えがそれだ。
ならば答えは一つ。
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