013.花を拾った夜(3)

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「彼女の容態は――動かせますか」 「点滴中だ。一晩待て。朝方なら、連れ帰っても構わん」 「ありがとうございます。出先で――少ないですが」  財布から抜き出して渡した10万円を、彼はいつもの通り数えずに胸のポケットに捩じ込む。 「充分だ」  取引が成立した。俺は長椅子から立ち上がる。 「では、明朝、引き取りに来ます」 「逃げ出す体力は無いと思うが、見張らないからな」  正面を向いたまま、横目だけでジロリと見上げてくる。彼の仕事はここまでだ、と言いたいのだろう。  頷くと、続けて一礼する。 「心得てます。――失礼します」  空いた缶を手に、李先生の診療所を後にした。  深夜の時間帯ではあったが、とある許可を求めて、ボスにメールを送った。30分も置かずに許可は下り、俺はある男にコンタクトを取った。彼の快諾を得ると、漸くスマホが掌から離れる。 「一段落付いた?」  白い革張りのソファーに身を沈めていた俺に、背後から優華の声が降る。  独り埠頭から戻っていた彼女は、拾った女を診療所に預けて来たことを伝えると、是も非もなく俺を部屋に呼んだのだ。
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