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「俺、は。俺は、これからどうしよう……?人間に戻りたい。それに、帰りたいんだ。でも、アテがないんだ……」
言葉にすると、改めて重みが胸にのしかかる。声が震えそうになるのは、歯を食いしばってこらえた。初対面の相手にそこまで情けない姿は見せられない。
「そうか。んー、ボクの住んでる町に来てみる?書庫くらいならあるから、ユウくんに関連することが見つかるかもしれない」
「え!?いいのか?俺はその、魔物なんだろ?」
「……魔物か人間かはっきりしてよ」
「見た目が、魔物なんでしょ?怖がられたりしたら困るというか」
俺がおずおずと尋ねると、少年はそんなことかと腰に手を添える。
「大丈夫。ボクがみんなに説明するとも」
「……さっきビビりまくって剣向けたじゃん」
「それは、ほら。身を守るためだから?いきなり突き飛ばされたりしたら困るというか」
言ってから、少年ははっとして、それから顔をしかめてこちらを睨みつけた。しばらく沈黙のにらみ合いが続いたが、俺の方が耐え切れなくなって鼻を鳴らす。少年もたまらず噴き出した。風で葉の擦れる音に、馬のいななきと少年の笑い声が吸い込まれていく。
「あぁもう。バカみたい。ふふふっ。それじゃあ、とりあえずボクの住む町まで案内するよ。それでいい?」
「うん。よろしくたのむよ」
胸を押しつぶそうとする重圧はまだ消えない。それでも、幾ばくか楽になっていたのも事実だった。少年はついてくるように告げると、先導するために俺の前を歩き始める。
しかし、数歩も行かないうちに立ち止まった。
「しまった。ボクひょっとしてユウくんに名前教え忘れてない?」
――覚えていない。俺だけ名乗っていた気はする。いや、実は少年も名乗っていたのかもしれないがもう覚えてない。ので、俺はすっとぼけることにした。
「あ、言われてみれば確かにそうかも」
少年は一言謝罪をすると目頭を揉んだ。それからもう一度笑顔をこちらに向ける。
「ボクの名前はロック。ガルルカ・ロックツェ・ウィリン。改めてよろしくね。ユウくん」
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