α-2 ウィリン領

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 鎧の男たちは、この町の自警団だった。そのうちの一人に先導してもらいながら、俺たちは図書館を目指している。図書館、と銘打ってはいるが、ほとんどロックの私設書庫らしい。  俺は、今までのやりとりで疑問に思っていたことを口にした。 「ロック、お前やけに好待遇だけど、なんでだ?」 「え!?」  ロックが立ち止まってこちらを見る。その顔は驚愕で彩られていた。 「え?またなんか変なこと言った?」 「え?え?そうじゃなくて、その、ボクのフルネームわかる?」  ――うろ覚えだ。確か、確か、えーと。 「カ……ガルル、ガルルカ・ロックツェ……えー、ロックツェ・ウィリ、ン」 「……う、ん。うん。すごくたどたどしいのが気になるけど、そうだね。ボクはガルルカ・ロックツェ・ウィリンだよ。じゃあ、ここの領地の名前は?」  まだ聞くか!?俺は焦り狂い、全身から汗を噴出しながら記憶を探る。確か町に踏み込む前に何か名前を言っていたのは覚えている。何故だか聞き覚えのある名前で……あ。 「ウィリン領……?あ、じゃあ君、領主様だったの!?」 「次男坊だけど……まあ、そういうこと」 「え、あっ。そうだったの!?」 「逆に何だと思ってたのか聞いてもいいかな!?」 「だってお前、町で一番腕が立つって言ってたから、さっきの人たちの隊長かなとか思ってた……」  しかし気付いてみると、ずいぶん的外れな勘違いをしていたことを自覚する。かなり恥ずかしい。  ロックは、俺の答えになるほどと返すと口を手で覆い隠した。やがて手を離すと、ロックは苦笑する。 「そんなにそれらしくなかったのかなあ」 「いきなりかっこつけ始めたなとしか思ってなかった」 「うわ、ひっどいんだ」  ふと見ると、自警団の男性がにやにや笑いながらこちらを見ている。俺もロックも、気恥ずかしくなって再び歩き出した。 「いやいや、本当、ユウ様には感謝しかありませんて。ただでさえロックツェ様はご友人が少なくてですね」 「友達少ないのかお前…」 「余計なことは言わんでいい!」  今の口調は幾分か厳めしいが、それでもロックの根の部分は変わらない。友人が少ないなど、ただ人との出会いが少ないだけの問題なんだろう。なんとなく、俺はロックを羨ましく思う。 「給金減らされたいのか?」 「オーッ!そいつは困ります!」  二人と一匹の笑い声が街道に響く。
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