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わずかなシャッター音が耳に届く。機械人形の女性メイドたちは、幾度か瞬きをすると、一糸乱れぬ動きで頭を下げた。
「ようこそいらっしゃいました、ユウ様。私たちはあなたを歓迎いたします」
怖い。普通に怖い。音声が音程違いで三つ、ぴったり重なって聞こえること。表情は愚か唇すら一切動いていないこと。小さいがゆえにかえって耳につく駆動音。
「あ、あざっす……」
小声でそう返答するのが精いっぱいだった。
「もう下がっていいよ」
ロックがそういうと、女性機械人形は再び揃って頭を下げ、しずしずと退出していった。
「さあ、調べ物を始めよう!……どうしたの?そんなに怖かった?」
「いきなりは心臓に悪かった」
馬面なので伝わらないだろうが、俺は渋い顔で言った。ロックは苦笑すると頭を掻いた。
「ごめん。悪気はなかったんだ」
ロックからすれば自分の備品を紹介したようなものだろう。過剰に怖がってしまったのはさすがに失礼だっただろうか。しかし、俺が口を開く前にロックが言葉を続けた。
「それにしても、生活支援型の機械人形も見たことがないなんて。ユウ君、ひょっとしてあまり裕福な生活ができていなかったのかい?」
なんとも答えに困る質問だ。下手に答えると後に俺自身の首を絞めることにならないだろうか。もやもやしながら、とりあえずのその場しのぎを図る。
「あーその、質問を返すようで悪いのだけど、どうしてそう考えたんだい?」
「実はボク、あんまり他の生活についてよく知らないんだ。生まれた時からあの三機に面倒を見てもらってたし、この町じゃそれが普通だし。生活支援型の機械人形は安価だから、ひょっとしてそれも買えないくらい貧しいところの出身だったのかなって思ってさ。ほら、地面だって硬いんだって言ってたじゃない?」
ロックは一度言葉を切るとこちらを見つめる。その表情はどこか寂しそうだった。
「技術レベルに見劣りがあるのかな、って……ごめん。さすがにデリカシーに欠けていたね」
「そんなことないよ!こっちこそいきなりすまん」
謝り合って、苦笑する。もう何度も繰り返した流れに少し飽きつつも、ようやく落ち着いてロックを見据えることができたような気がした。
「俺が知ってることとギャップがあるってだけさ。世界は広いんだ」
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