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Ω-1
その日は異様に疲れていた。学園祭で二年生最優秀賞を貰い、振替休日を1日潰してクラスメイトたちとどんちゃん騒ぎをした後だったからだ。
……他にも、罰ゲームと称して嗅がされた、異様な匂いの何かや、飲まされたミックスジュース(コーラ、100%アップルジュース、メロンソーダ、烏龍茶、うめじそドレッシングを混ぜたゲテモノだ)も、現在の体調に一役買っていることは間違いない。
自分以外にも嗅がされたり、飲まされたりしていた被害者がいたのが、ある程度の救いと言えるかもしれないが。
ソファに寝そべりながら、本棚に置かれた時計を見る。現在時刻は午後8時15分を少し過ぎたところ。親が帰宅するまでにはまだ時間がある。
本当は二次会でカラオケに行く予定だったのだが、思ったより疲労が大きかったことと、補導により大学の推薦枠がなくなる可能性を潰したくて辞退した。後者よりは前者の方が理由として大きい。楽しい思い出は多い方が夢見もいいのだから。
――やはり参加すれば良かっただろうか。若干モヤモヤした気持ちが胸に渦巻いた。
気分を変えようと、家の天井を見上げる。横になりっぱなしだったからか、少し身体が強張っているようだ。うん、と伸びをして、パーカーのポケットからスマートフォンとイヤホンを取り出した。ラジオアプリのチャンネルを適当にザッピングしていると、CHEMISTRYの「merry-go-round」を流している番組にたどり着いた。これはいい。音がクリアに聴こえる様に調整をしたところで、抗いがたいほどに瞼が重くなる。
「ちょっとだけ……寝よう」
ぼんやりと独り言を漏らして、意識は闇に吸い込まれていく。
どうせすぐに帰ってくる親に叩き起こされるだろうと、この時の俺は呑気に考えていた。
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