9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ホント鈍いよな、音羽は」
映像が消え、直ぐ目の前に真っ赤に上気した
璃久の顔。
睨むような目で、あたしを見ている。
「俺が好きなのは、お前に決まってるだろ」
「え?」
予想外の展開に思考が付いていけない。
なんで?まさか?嘘でしょ?
いきなり璃久があたしの肩を掴んだ。
まるでスローモーションのように
キレイな顔が近づいくる。
10秒前に視た構図と寸分違わない。
でも、あたしは―――――…
「ま…待ってよ、璃久!」
反射的に、その胸を押し返す。
しまった!
そう思った時には、既に遅く
反動で2・3歩後ろに下がった璃久は
バツが悪そうに俯いている。
あたしは、一里眼の決まり事を破り
10秒後の近未来を変えてしまったのだ。
祖父の声が耳奥に蘇る。
「約束を違えば――大きな災いが降りかかる」
ずっと胸に秘めていた想いが、叶った瞬間。
今が幸せの絶頂の筈なのに…
「どうしよう、璃久―――――」
涙が溢れてくる。
”その時”はきっとすぐに訪れるんだ。
あたしは死の恐怖に震え上がった。
最初のコメントを投稿しよう!