10秒後の近未来

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顔を上げた璃久は、驚いたように目を見開いた。 「おぃ、なんで泣いてんだよ!」 少しだけ拗ねたような顔をし 「…ったく、泣きたいのは俺の方だってぇの  ―――勇気振り絞って告ったのに、あっさり  フラれたんだからさ」 あたしはあわてて首を振った。 「違うの…  嬉しいよ。ものすごく嬉しい!  だって、あたしもずっと璃久の事好きだったから」 「え?マジで?」 「でも…でもね。あたしもうすぐ死んじゃうの」 あとからあとから、涙が溢れてくる。 嫌だ、死にたくない。 「ちょ…何言ってんだよ、音羽。  死ぬって…訳分かんないんだけど」 「あたし、約束を破ったから災いがふ…」 また映像が浮かんだ。 白い球が勢いよく飛んできて、あたしの後頭部に直撃する。 膝から崩れ落ちる身体を支える璃久の腕。 これがあたしの最期なんだ――――― そう思った瞬間、後頭部に衝撃と鈍い痛みを感じた。 意識が遠のく。 …バイバイ、璃久。大好きだよ… 「きゃー、すいません。大丈夫ですかぁ?」 後ろから響く、甲高い声。 あれ? あたしは璃久の腕の中で、目を開けた。 振り返るとスコートをはいた女子が立っていた。 「ごめんなさ~い。ボール飛ばしちゃって」 璃久は足元に落ちていた軟式のテニスボールを拾い上げると その子に放り返した。 「すいませんでした」 何度も頭を下げながら、コートへと戻って行く。 「ねぇ…璃久?」 「ん?」 「あたし、生きてる…よね?」 多少ずきずきする後頭部を撫でながら尋ねると 璃久はぷっと吹き出した。 「大袈裟だな。あれ位で死ぬ奴いないだろ」 そっか… あたし、生きてるんだ!
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