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「音羽が引き継いだのか…」
深い呼吸と共に吐き出される祖父の呟き。
「え?なに、引き継いだって…」
「良くお聞き、音羽」
祖父は、真っ直ぐにあたしの目を見る。
「【10秒後の近未来がみえる】
これは祭家に代々受け継がれてきた能力だ。
儂は”一里眼”と呼んどる」
「…いち…?」
「一里眼。
ほら、良く言うだろが。
千里も先の遠い場所を見る事が出来る能力を”千里眼”って」
あたしは黙って頷いた。
怪奇現象特番で取り上げられていたのを見た事がある。
「まぁ、儂らはもっと短い。
たったの10秒後が見えるだけだからな。
千里とまではいかんので、一里と名付けた」
『座布団一枚』とでも言いたげな祖父のドヤ顔を
見ながら、あたしは軽いパニック状態に陥っていた。
10秒って…誰得?
せめて1時間とか半年とかもう少し長いスパンで見えれば
使い道もありそうだけど―――――
いやいや、そんな事より…
千里でも一里でもいいけど、何なのそれ?
代々受け継がれるって、遺伝みたいなもの?
ってか、祭家って超能力一家だったの!?
「じゃあ、お父さんとか琴音にも見えるの?」
琴音はあたしの2つ下の妹だ。
今までそんな話を聞いたことはないけれど…
祖父は首を横に振った。
「これは祭家の人間全てに与えられたモノではない。
選ばれた、極一部の者のみが持つ力。今は儂と…音羽だけだな」
「要らないよ。そんな変な能力なんて。
10秒後が見えたって、意味ないじゃん」
思わずそう叫ぶと、祖父は眉尻を下げた。
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