9人が本棚に入れています
本棚に追加
以来、あたしは祖父の言いつけを守り
厄介でしかないこの能力と何とか折り合いをつけ
生活している。
祖父の言った通り
”一里眼”が発動されるきっかけになる
危険やピンチの度合いには驚くほどの差があった。
これまでに、あたしの目の前に10秒後に起こる
出来事が浮かんだのは―――――…
飼っていた文鳥を締め忘れた窓から逃がしてしまった時。
理科の実験中にアルコールランプを炎上させ、前髪を
焦がしてしまった時。
はたまた、スキー合宿で転倒し足の骨を折った時。
などなど…大事、小事様々。
ま、とっさに身体が動くほど発達した運動神経を持ち合わせて
いなかったのが幸いしてか…それらの出来事を回避できず
今の所”大きな災い”とやらに遭遇した事は無い。
そんなあたしの唯一の共感者だった祖父は、2年前の冬
風邪をこじらせ、呆気なく逝ってしまった。
その最期の時。
あたしを枕元に呼び寄せると、ぎゅっと手を握り
「達者でな、音羽」
と微笑んだ。
その10秒後、静かに息を引き取ったのだった―――――
最初のコメントを投稿しよう!