10秒後の近未来

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以来、あたしは祖父の言いつけを守り 厄介でしかないこの能力と何とか折り合いをつけ 生活している。 祖父の言った通り ”一里眼”が発動されるきっかけになる 危険やピンチの度合いには驚くほどの差があった。 これまでに、あたしの目の前に10秒後に起こる 出来事が浮かんだのは―――――… 飼っていた文鳥を締め忘れた窓から逃がしてしまった時。 理科の実験中にアルコールランプを炎上させ、前髪を 焦がしてしまった時。 はたまた、スキー合宿で転倒し足の骨を折った時。 などなど…大事、小事様々。 ま、とっさに身体が動くほど発達した運動神経を持ち合わせて いなかったのが幸いしてか…それらの出来事を回避できず 今の所”大きな災い”とやらに遭遇した事は無い。 そんなあたしの唯一の共感者だった祖父は、2年前の冬 風邪をこじらせ、呆気なく逝ってしまった。 その最期の時。 あたしを枕元に呼び寄せると、ぎゅっと手を握り 「達者でな、音羽」 と微笑んだ。 その10秒後、静かに息を引き取ったのだった―――――
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