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裏庭から校舎前を横切り、校庭の端にある
水飲み場まで駆け抜けたあたしは、やっとそこで
足を止めた。
心臓が張り裂けそうなほど、ドキドキと鼓動を
響かせる。
幼馴染が告られる場面は一里眼を
発動させる程の衝撃力を持っていた。
あたしだって―――――
あたしだって、前から好きだったんだよ…璃久。
西尾璃久とは、幼稚園から高校までずっと一緒。
子供の頃の璃久は、痩せっぽっちで小さくて
色白で、女の子みたいに可愛らしい顔をしてたから
いつも近所のガキ大将にからかわれていた。
早生だったあたしは、同級生の中でも背が大きく
骨太でがっちりしていた上、祖父から剣道の
指南を受けていた事もあり、腕っぷしには
かなり自信があった。
だから、ガキ大将達に小突かれメソメソ泣いている
璃久を見掛けると枯れ枝を手にその輪の中に
臆せず突っ込んで行った。
枝を八相に構え、ぎろりとひと睨みし
「璃久をいじめるヤツは、ただじゃおかないからね」
と啖呵を切ると、悪ガキ共は
「やーい、男女!」と憎まれ口を叩きながら
散りじりに逃げ去っていく。
「ありがとう…音羽ちゃん」
涙でくしやくしゃの顔にキレイな笑みを浮かべる
璃久の柔らかいくせ毛を撫でながら、あたしは
『ずっと守ってあげる』と
密かに心に誓ったのだった。
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