1人が本棚に入れています
本棚に追加
天使の梯子
僕は頭が悪いんです。
昔はできました、勉強。
でも、今は何も考えられない。
誰かの言葉は僕には伝わらない。
ある人に言われました。お前はどんくさいし、要領も悪い。
それは子どものころから変わらないのだろう。
何度も言うようですが、勉強だけは人並み以上にできました。
中学校や高校の勉強なんて、教科書を丸覚えすればいいだけのことなんです。
それ以上の応用力や、社会での生き方などはこの年になっても身につかないままです。
そのあたりのことについて、人は僕を頭の悪い奴だと考えるのです。
自分でもうんざりしてしまいます。
僕が空を見上げたときのことです。
天使の梯子が見えました。
それは、とても美しいものでした。
そして目の前には、天使か、女神か。
そう、あなたが立っていたのです。
そしてあなたは、僕の目の前まで来て僕をぎゅっと抱きしめました。
「大丈夫だから、ね」
顔は伏せられており、どんな表情をしていたのかわかりませんでしたが、とてもやさしい声色でした。
まるで、ずっと以前に別れた母のように。
今でも僕はその時のことを思い出しますし、彼女の温かさがまだここに残っているような気がします。
彼女はいったい何者だったのだろうか。
でも、頭の悪い僕に勇気をくれたのは確かです。
そうして僕は、ときどき彼女を思い出し、日常生活に身を投じるのです。
最初のコメントを投稿しよう!