第一章 支度

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『イケメン』は髪を掻き上げると、その瞳に苛立ちが宿った。  そして足を組み替え、青い扉を指差した。  そこで美尾は慌てて青い扉を見た。  青い木製のドアで、丸いドアノブがレトロ感を強調している。  その隣にある赤い扉も同じ様な造りだ。  美尾はどうしたら良いのか分からず、もう一度『イケメン』を見る。 「早く」 『イケメン』の視線は美尾を貫いたまま動かない。  そんな雰囲気に抗える訳もなく、美尾はゆっくりと青い扉に近付く。  美尾はもう一度『イケメン』を盗み見る。  もう指は指していないものの、美尾の事をひたと見据えたままだった。  美尾はドアノブに手を伸ばす。  手からはヒヤリとした感触が伝わってきた。  そのままドアノブを回し、ゆっくり引いてみる。  キィッと軋む音をさせながら扉は簡単に開いた。  そして次の瞬間、まばゆい光が美尾を包んだ。
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