おわりとはじまり

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 最初にたどりついた家は無人で、開けっ放しの戸口からのぞくと、イカの干物がむしろに積んであった。  その裏手の方の家には子供がいて、私の姿を見るとひきつけをおこしてひっくり返ってしまった。  隣の家に行ってみると、庭先ににわとりが何羽かいて、縁側には卵が入ったかごが置いてあった。見たとたん、むしょうに食べたくなって、卵を手に取り口中に割り入れた。とろりとした白身に包まれたやわらかな黄味を口蓋と舌で圧しつぶすと、薄い膜が破れて甘味が広がる。 「ああ美味しい」  気がつくと、かごの中は空っぽになっていて、足元に卵の殻が散らばっていた。  にわとりもどこかに逃げていなくなっている。 「死んでるのに食欲ってあるんだ……」  なんだか可笑しくなって、私は笑いながら他の家に向かった。  なんだか家々がさっきより小さく見える。地面も遠くなった気がする。
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