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僕たちが耐え切れなくなってその部屋を出た理由の一つが、つまり出るんですその部屋、部屋の壁を妙な影が横切ったり、手の様なものが窓の外に見えたり、そのくらいだったら目の錯覚で済ませられるんですが、あの日の体験は錯覚だけとは言い切れないものがありました。
ちなみに僕たちはその部屋を出た後、そこから徒歩で十数分くらい行った、聖母病院という病院がある坂のアパートに移るんですが、そこは病院があったため空襲されずに済んだ場所なんだそうです。そこへ移ったらピタリと怪奇現象は収まったんです。もともと僕たち兄弟は霊感なんてありません、でもあのボロアパートではひっきりなしに妙な体験をしたんですよ。
蒸し暑い夏の夜に一人部屋の端っこで僕は寝ていました。ちょうど僕の頭が部屋の入口にあり、炊事場とトイレへつながっていて、部屋の奥の方で兄が寝ていました。
その日はなかなか寝付くことができず、目を閉じながら僕は考え事にふけっていました。夜も相当深まったころです。道路を通る車も無くあたりは静かでした。
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