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ふいにトントントンとトイレの方から子供が走ってくるような音がしたんです。あれは聞き間違いじゃなく確かに子供の足音でした。
その足音はトイレの方から炊事場を横切り、ちょうど僕の頭のすぐそばで止まりました。
ぞっとしました。その子供が僕を見ているような気がしたんです。その時はそれを確認することはしませんでした。本当に怖かったから。
僕は固く目を閉じて、タオルケットを頭までかぶりました。
でも、やっぱり気になるんですね。怖くてそのままじゃとても眠れない。僕は意を決して頭をあげました。
すると、いないんですね、なんにも。その時はすごくほっとしました。
なんだ気のせいかと思い込んで、そのまま眠りにつきました。
ちょうど寝入り端、うつらうつらとしていた時です。兄が突然飛び起きたんです。がばっと凄い勢いで立ち上がり部屋の電気をつけました。
僕は何事かと思って目を開けました。兄は青ざめた顔で「やばかった」と言いました。
兄が言うには金縛りにあい、胸に女の子がのしかかってきたと言うんです。その女の子は兄に「お兄ちゃん? お兄ちゃん?」とつぶやき続けたんだそうです。
兄は必死に心の中で俺はお前のお兄ちゃんじゃないと訴えたそうです。やがてその女の子はどこかに去っていったんだそうです。
夜中に二人でやっぱりあるんだなこういう事と話したのを今でも覚えています。
もしかしたら空襲で亡くなった女の子が未だに兄を探しているのかな? と思うと、とても怖い体験でしたがなにか胸に去来するものがありました。
僕と兄は二人で女の子の冥福を祈りました。
お菓子と水を足音がした炊事場の隅に置き。それから間もなく僕たちは新しい住居へ移り住みました。
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