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「くそ、早い!」
男たちはくるりと振り返って琉菜を睨んだ。
「あんたらが遅いんだよ」
琉菜はそう言うと間髪いれずに片方に体当たりした。
「うぐっ!」
そして男が取り落とした木刀をつかみ、胴の位置を思いっきり打った。
男はバランスを崩し、ドサッと倒れた。
「お、おい!…このやろ!」
もう片方が木刀で向かってきた。
琉菜はそれをさっと受け流し、ガンッと木刀を打って相手に取り落とさせた。
琉菜は木刀の切っ先を男の鼻につきつけ言い放った。
「男なら、約束は守ってくれますよね?」
「は、はい…」
男はのびているもう片方をむんずと抱えて、猛ダッシュで逃げていった。
「怪我ないですか?」
琉菜は店内に戻り、にこりと笑った。
「へ、へぇ。おおきに。強いんどすなぁ」
「いいえ。あいつらが弱いだけです」
「そう言うたら、お客はんの名前、聞いてへんかったどすなぁ」
「あたしは、宮野琉菜と申します」
「お武家の方どすか?それでそんなにお強いどすのんか…?」
「は、はあ。まあ…」
そっか。この時代名字があるのはそれなりの身分の人だけだった。
面倒だからこれから何かあったら名前だけ名乗っとこ。
「うちは多代いいます。どうぞよろしゅう」
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