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「口の堅い…?なんでまたそんな」
「実は…あたし、男になりすまして、しんせ…壬生浪士組に入ろうと思ってます」
「は…?」
多代の反応も無理はない。しばらく黙った後、多代は咳払いをして話を続けた。
「ちょお待ってや。琉菜ちゃんは女子やろ?男装して、壬生浪に?なんでまた…?」
「…どうしても、会いたい人がいるんです」
多代がまだわからない、という顔をしていたので琉菜は話を続けた。
「その人に会うために、あたしはここに来たんです」
琉菜は多代に自分が未来から来たと言うべきかどうか迷っていた。
しかし、おそらくこの世界には多代以外に自分の正体を明かせそうな人はいない。
一人くらい本当のことを知っている人がいたほうが何かとやりやすいだろう、琉菜はそう判断した。
琉菜はすっと息を吸うと、話始めた。
「お多代さん、あたしがこれから話すことは全部真実です。兵右衛門さん以外の誰にも口外しないでください」
数分後、多代はぼうぜんと琉菜を見つめるばかりだった。
「ほな、琉菜ちゃんは今よりちょっと先の壬生浪で働いとった…そうなんやな」
琉菜はこっくりとうなずいた。
「だから、女のままで行くのは無理なんです」
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