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3.みぶろ
琉菜の中に、嬉しさがこみあげて来た。
やっぱりいるんだ。この時代に、新選組が!
「それじゃあ、新選組は京都にいるんですね!」琉菜は嬉し泣きしそうな勢いで言った。
「新選組?…って、なんどすか?」女将は眉をひそめた。
「え?だって今壬生浪って…」
暫しの沈黙。
話が噛み合っていない、と琉菜は思った。
お互い、相手を怪訝そうな目で見つめた。
「…壬生浪って、壬生浪士組のことと違うんどすか?」
女将の言葉に、琉菜は少し考え込んだ。そして、ようやく意味がわかった。
「壬生浪士組!そうですよね、何言ってんだろあたし。あはははは!…あの、ちなみに今日って何月何日でしたっけ?」
「へえ。8月2日どすけど」
「そうですか。ありがとうございます!それじゃあたしはこれで休ませてもらいますね」
琉菜はそう言って、半ば強引に部屋の中に消え、襖を閉めた。
女将は不思議そうな顔のまま階下へ降りていった。
わかったことは、今が文久3(1863)年の8月2日で、新選組がまだ壬生浪士組と呼ばれていた時代だということ。
琉菜が来た時代は確かに幕末だった。
だが、幕末は幕末でも、ここは琉菜が以前いた時期より前。
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