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4.兄上の正体
数日後。
琉菜はまだ、どうやって新選組の面々に近づこうかと悩んでいた。
早くみんなに会いたいなぁ…
琉菜は何気無く自分の部屋の窓から外を見た。
すると、浅葱色にだんだら模様を染め抜いた隊服を着た壬生浪士組の隊士たちが下の通りを歩くのが見えた。
おそらく巡察なのだろう。
顔はよく見えなかったが、琉菜は興奮を押さえるのに相当苦労した。
新選組だ!本物だ!
本当に、あたしはかえってきたんだ。
新選組のいる、この時代に。
「お多代さん!あの!」
琉菜は1階に降りると、掃除をしていた女将に声をかけた。
今この旅籠に宿泊するたった一人の客である琉菜と、その旅籠の女将が打ち解けるのは、ごく自然なことだった。
もともと旅籠の雰囲気は気にいっていたので、琉菜はたった数日でここを幕末第2の家だと思うようになり、人のよい主人の兵右衛門と女将の多代を親のように慕うようになっていた。
「どうしはったん、そないに慌てて」多代は目を丸くして琉菜を見た。
「あのっ、その…口の堅~い床屋さんか髪結いさんの知り合いはいませんか?」琉菜はおずおずとそう言った。やはり、突拍子もないだろうか、とこの時点でもまだ思っていた。
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