5.入隊試験

1/8
321人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ

5.入隊試験

 懐かしい…!!  壬生の屯所だ。  西本願寺に引っ越してまた壬生に戻ってくるなんてヘンな感じだけど、とにかくあたしは戻ってきたんだ…!  琉菜は壬生の屯所前でふう、と深呼吸して高鳴る胸を落ち着かせた。 「すいません、オレ浪士組に入りたいんですけど!」琉菜は入口付近にいた隊士に元気よく言った。  新選組にいる間は、この男言葉で通すつもりだった。前回来た時に、中富がそうしていたように。 「お前が?まだ童じゃねえか」声をかけられた隊士は嘲るように笑った。 「童じゃねえ!オレは19だ!」 「19!?そうは見えねえが…」 「とにかく、入隊試験くらい受けさせてくれよ!」 「なんの騒ぎだ?」  琉菜ははっとして門の奥を見た。  何度も聞いた懐かしい声。  土方がいかつい顔でこちらへ向かってきた。  お久しぶりです!土方さん!  琉菜は嬉しそうな顔を必死で出さないようにして土方を見た。 「副長!この童が、入隊したいと…」 「だから童じゃねえ!」琉菜は喚いた。  土方はしげしげと琉菜を見た。 「名は?」土方はそれだけ言った。 「中富新次郎」 「とりあえず力量だけ確かめようじゃねえか。ついてこい」 「はいっ!」 「ふ、副長?こんないきなり現れた童のお相手を?」隊士は慌てたように土方を見た。 「実力次第だ。たとえガキでも、今の壬生浪士組に兵力が増えるに越したこたぁねぇ」 「それも一理ありますが…」  納得いかなさそうな隊士を無視して、土方は琉菜を中に招き入れた。 「平助は巡察…佐之と新八もいねえか…」  土方はぶつぶつと言って何か考えていた。 「…仕方ねえな」
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!