卯月

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 舞田の登場とともに姿を現したスケッチの山に、名前の一致。関連がないと結論づける方が難しい。  短気なところのある加奈子が、先生に聞きに行こう、と提案して、ルイの、「乗った」の一声がかかった。たったの三人しかいない美術部員は、全員で職員室の舞田の元へ突撃した。 「失礼しまーす、舞田せんせぇ」  書類を整理してた舞田は四角い縁の黒い眼鏡をかけて、昼とはまた雰囲気を異にしていた。いきなりクラスの生徒でもないルイに声をかけられて、訝しげな表情を浮かべる。整理している途中の紙の束を几帳面に角を揃えて、ゼムクリップでまとめる。古い椅子をギイ、と鳴らして、ぽりぽりと首を掻きながら廊下に出てきた。 「どうかしましたか」  用があるならとっととしろとでも言わんばかりの面倒くさそうな舞田に、ルイが『はじめの肖像画』を眼前に突きつける。  提示されたものを理解すると、元から大きかった目が見開かれて、驚愕とも怒りともつかない表情を見せる。拳が強く握りしめられる。 「舞田先生こんにちは。美術部部長の有島ルイです。これ、先生の私物ですよね」  舞田は肖像画をルイの手から取り、美術部員に睨みを効かせる。     
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