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「そうです。私のものです。君たちは、人のものを勝手に触って良いと教育を受けてきたんですか。前の顧問の先生はそのように教えられましたか」
文面だけ見れば諭しているように見えなくもないが、ヤクザの若頭を思わせる目つきとドスの効いた低い声、怒っているのは明らかだった、はしゃいでいた空気が一気にピリついた。ホームルーム時の弱々しい姿とは一転し、怒り露にした舞田はカタギの人間には見えなかった。
ルイは引き下がらなかった。
「美術室に大量のスケッチブックが置いてあって、美術部員が何も見ずに放っておくとでも思っちょったんですか。それとも……」
「おい!」
類の言葉を遮り、舞田が途端に大きな声を出した。周りの生徒や教師の視線も舞田に集まる。舞田がルイの肩を強く掴んで、顔をぐいと近づけた。さながら戦時中の詰問か尋問のようだった。
「スケッチブックも見たのか」
一日中、ですます調を崩していなかった舞田の言葉遣いが変化した。それほど焦っているのだろうか。苛ついている左足は、地面を激しく踏みならしていた。
「どこまで見た」
ぎらりと睨む視線がルイに突き刺さる。余裕を見せていたルイだが、大人の男に急に詰め寄られれば、怯えてしまうのは無理もない。
「え、どこまでっち……」
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