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画面の中のキャラクターは美沙をいじめたりしない。舞田に騒ぐ女子を横目に、貴方のほうが百倍はかっこいい、と筆箱につけているゲームのキャラクターのラバーマスコットに語りかける。
美沙と同じく美術部員の加奈子が、背後からこっそりと話しかける。加奈子は舞田先生は幽霊みたいじゃなか?、とくすくす笑う。
美沙は、確かに、と思った。幽霊みたいでもある。生っ白くて、生気がない。明るい校庭よりかは、校舎の裏にあるビオトープが似合いそうな、陰気な雰囲気を醸し出している。
こういうタイプの先生に、美沙は初めて出会った。幼稚園の頃から、先生といえば底抜けに明るくて、嫌味なくらいに元気だった。教室で絵を描いていた美沙を無理やり外遊びに連れて行こうとする人ばかりだったから、美沙は教師というものは自分の価値観を理解してくれない存在として認識していた。
陽のオーラに溢れた先生たちに、ハキハキと大きな声で「校庭に行くぞ!」と指示されると、美沙は気持ちが沈んで仕方なくなるのだった。
先生は美沙の世界がわからないのだ。気に入ったキャラクターや動物の姿を、ノートに現して行く作業は、美しく、気高い行為である。砂埃にまみれて球を蹴ることよりも、ずっと楽しくて素晴らしいのに、それを理解してくれた先生は今まで一人もいなかった。
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