卯月

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 その点、美沙は舞田に期待をしていた。妙に仄暗い雰囲気だということもそうだが、舞田はこの中学の新しい美術の教師なのだ。  三月まで美術部の顧問をしていた刈谷先生、通称カーリーは、気の強いおばちゃん先生で、デッサンばかりをさせるので、漫画が好きで入ったような部員とはソリが合わなかった。美沙もその一人だった。描いていた漫画を、こんなものは芸術ではない!と怒られて、破られてから、美沙はカーリーが大嫌いだった。びりびりと破られる音が、いまだに耳にこびりついている。  入部当時いた8人の部員が3人に減っても美沙は辞めなかった。いくら顧問が嫌いでも、友達もいる部活という居場所を手放したくなくて、カーリーが定年退職するまで耐え忍んだのだった。  新しい顧問になるのは、きっと舞田だ。年齢的に、保護者からのクレームが来そうなことはしない、都合がいい、と美沙は値踏みした。  顧問としての期待値を含めて、美沙は舞田に星四つの評価をつけた。一つ足りない星一つは、あまりにも暗すぎるために食らわせた減点だ。
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