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息を切らしながら、生徒に5冊か6冊か教科書やらワークブックを手渡していく。体力のなさを目の当たりにして、女子たちの最高潮に達していたテンションが徐々に下がっていく。まだ、運動神経の高さや運動会での貢献度が、モテに大きく影響している年代である。階段を上がるくらいでぜえぜえと呻くような貧弱な舞田は、速攻で「おじさん」認定されてしまった。中学生は時に恐ろしいくらいに残酷である。明らかに態度を変えて、がっかりとした表情を露骨に表した。
舞田は気に留めないようにしているのか、気がついていないのか、あくまでも淡々と新年度の業務をこなして行く。新卒で余裕がないことを差っ引いても、舞田は仕事ができない類の人間なのだ、と教室の全員が確信した。ただ教科書を配るだけなのに、もたついて仕方がない。無駄な動きが多すぎるのだ。
全員に全教科の教材が揃った頃には、もう終業時間になってしまっていた。美沙の去年の担任だったベテランの国語教師は、時間を余らせてレクリエーションをする時間があったくらいなのに。
見た目の期待値が高かった分、仕事もできない、体力もないということに生徒たちは余計にがっかりした。教室内での舞田の評価は急降下していった。
くぼちゃんをはじめ、新担任に胸を踊らせていた子たちは、伸ばしていた背筋を丸めて、彼女らの目の輝きは消えていった。
授業時間が終わる頃には、すっかり別人になっていた。
「起立、気をつけ、礼。ありがとうございました」
間延びした声で日直が帰りの挨拶の号令をかけると、かばんを担いで三々五々に教室を去って行く。
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