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幼なじみ
「あーつーいー」
ガンガン回る扇風機の羽根に向かって叫んでみる。16歳の夏休み。
ヒマ。部活は休みだし、バイトしようにもうちの高校では禁止されてるし、もちろん勉強なんてする気ない。だからといって遊びに行くのも億劫だし、私はただゴロゴロと畳の上を転がって夏をムダに消費している。
あおむけになって、目を閉じた。じりじりと蝉が鳴いている。額からひとすじ汗が流れ出た。暑い、そして眠い。
次第に意識がぼやけていく。ゆるゆると、眠りの世界へすべり落ちていく、その寸前で。
「何やってんだよ、双葉」
あきれたような声が降ってきて、あたしはぱちっと目を開けた。
「ゆ、有也!」
がばっと身を起こす。そして、慌てふためきながら乱れた髪を撫でつけた。
ありえないほど鼓動がはやい。だって、まどろみから覚めたら、いきなり目の前に有也の顔があったから。
ぜんぜん気づかなかった。寝ている私のすぐそばに有也がしゃがみこんで、私の顔を見下ろしていたなんて。ほんと、いつの間に。
「な、なななな何の用ですか」
「いや。すいか。あるから食べてけって、おばさんが」
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