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こいつは入社当時から、ずっとそのカナコさんなる人物を崇拝していて、同期の俺にもたびたびその先輩の話をしてくる。てっきり彼女なのかと思っていたが今のところ清く正しきメシトモなんだそうで、セックスはおろか手もつないだことがないというから驚いた。
昔からカナコさんカナコさんと言ってるわりに自分から誘うこともできずただただ相手から連絡が来るのを待っているのだと語っていたので「へえそう、いつかいいことあるといいね」と生暖かい視線で見守っていたが、ここ最近しょっちゅうメシのお誘いがあるとか言い出してついにとうとうイカれちゃったのかなあとか思っていたのだが、これがほんとにその先輩から頻繁に呼び出されていたらしい。
なんでもその先輩とやら、ただいま婚活中で全然うまくいかないんだとかで。
かわいそうなぽち君相手に毎回えんえんと愚痴を聞かせているのだそうだ。
「お前ってほんと不憫なのな」
溜息とともに吐き出したこの一言に込められた万感を理解しているのかいないのか、ぽちはなぜか誇らしげに
「島本には分からないんだろうなあ。僕のこの超高度戦略は!」
などと宣った。
「いや、分かりたくもないし。つうかなに、じゃあお前こんな時間まで残業してると見せかけてメシのこととか考えてたわけか」
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