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「で、だ。お前さんならどうだい? 誰もが認める美男だ…… なあに、大奥の男日照りの女を相手するだけで――」
「聞こえてるわよ!」
ねねが背後から商人の頭に拳骨を落とした。
稲妻のような凄まじさで落とされた拳骨に、商人は目を回した。
「き、きっくぅ~……」
商人は庄机の上から地面に転がり落ちた。不思議に商人の顔は満ち足りているように思われた。
「全く、男は馬鹿ばっかりで……」
「さ、さすが姐さん!」
ねねの迫力にうどん屋の店主は――
端から見れば、ねねよりはるかに威圧感を備えている店主が、彼女の前ではたじたじだ。
「俺達にできない事を平然とやってのける! そこにしびれる、憧れるう!」
「あー、うるさいわよあなた」
ねねは蘭丸に振り返った。
凛とした眼差しに、蘭丸は意味もわからず胸を高鳴らせた。
「蘭丸様……」
「……な、なんだ」
静かなねねの瞳に蘭丸の心は激しく揺れた。
ねねは元々、美人で通っている。
仕草がたまらなく残念なので、蘭丸は普段は意識していないが、いざ向き合えば、ここまでねねが美しいとは。
まるで仏教画に描かれた天女のようだ、と蘭丸は思った。
「女を買いに行く相談でしたら、わたくしも混ぜてください」
「はあ?」
「男ばっかりずるい! わたくしも飲む打つ買うを味わいたいですわー!」
「お、お前な……」
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