魔天の城

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 彼は魔物と戦うのが定めだ。  たとえ死すとも、彼に続く者はいるはずなのだ。  だから死ぬのは怖くない。  怖いのは何もできずに死ぬ事だ。  不意を衝かれて刀を抜く事もできないが、せめて最期まで――  魔物を斬るという決意を秘めた瞳を蘭丸は黒夜叉に注いでいた。  黒夜叉は満足げに下卑た笑いを浮かべた。 「えへへへ、旦那あ冗談でやすよ」  黒夜叉の瞳の紅い輝きは唐突に消え失せた。  下卑てはいるが、友好的な笑みを浮かべて黒夜叉は蘭丸を見つめていた。  なめ回すような視線に蘭丸は生理的な嫌悪を感じた。 「……旦那あ、大奥には魔物が潜んでやすよ」 「何だと?」 「それを斬るのが旦那の使命であり、天命でやすよ」  言った黒夜叉の顔は凛々しく気品にあふれていた。蘭丸の同居人のねねもそうだが、女は突然別人のようになるのが不思議だった。 「もしも、あちきのお手伝いが必要な時は呼んでください。すぐに飛んでいきやす」 「待て、お前は何を言っている?」 「……旦那あ、この黒い世界を断ってください。誰も彼もが苦しみの輪廻に囚われているんでやす、それを少しでもほどいてくれれば、あちきは満足でやすよ」  黒夜叉が言い終える同時に、夜の闇に光が差した。     
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