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左胸にでかい蜥蜴の刺青のあるデュークと、そんなものはない洋二は、道端のサリサリストア(よろずや)で毎朝、白クマ印の缶入りミルクと、小さなゆで卵を三個、スパム(寄せ肉)を挟んだほかほかのパンを五個買って、立ったままでかっくらう。洋二は温いスパムパンを、決まって毎日二つ、クロにやる。犬は嬉しそうにパンを食べる。店の傍の畑には、育ちの悪いトウモロコシがひょろひょろと並んでいる。原生林の向こうは広大なパイナップル畑だ。
二人の中年男が串に刺したパイナップルを齧りながらゆるい坂を登ると、ガソリンの匂いの風が流れてきた。
これが彼らの「宝探し会社」だ。
パイナップル島の岬、太平洋に向いた丘に建てられた、簡素な平屋建ての天井には、いつもぬるい扇風機がゆっくりと回っていて、ホンダの発電機が一日中やかましい音を立てている。入口のトタンの雨よけ屋根の下には、粗末なビニールクロスのかかったテーブルと、薄汚れたプラスチックの丸椅子がいっぱい置かれていて、みんなは「ロビー」と呼んでいる。ロビーには、髪の色、目の色、体格の違う十人ばかりの野郎どもが、もう集まっていた。
「よう、デューク、よう、ヨージ。いい朝だな。今日は少し横穴を掘ろうや。きっと金貨のはしくれでも出てくるよ。」
いつもの朝だ。
東南アジアの夜明けは遅い。朝は六時きっかりにならないと太陽は出ない。夜が明けたら作業開始だ。夜明けに家をでてから日の入りまで、タイフーンでもスコールでも、近在の島のジャングルというジャングル、洞あなという洞あなを片っ端から掘り返して、今日こそは、今日こそは、毎日そう思いながら、デュークは二十余年、ヨージは十九年。
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