人の死と、自分の生

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人の死と、自分の生

 それから、私はなんとなく上の空で、なんとなく日々を過ごしていました。  なんとなく勉強をして、とりあえず受験をしました。  そんな態度で受けた大学受験。    見事に落ちまくりました。  なんだか自分を否定されているような気分でした。  浪人か就職しなきゃダメかなと思いましたが、ダメ元で受けた一校に奇跡的に合格し、今はそこに通っています。    入学も確定し、高校も卒業。  何もやることもなく、不規則な生活を送っていました。  外にも出ず、ずっと家の中。  そんなとき、学費の話になりました。  「三姉妹で私立大学だから、お金が厳しい」 という母の一言に、どうせなんとかなるんでしょ?と思いながら、私はこう言いました。  「じゃあ、たかひろがいたらどうしてたのさ?」  たかひろは、我が家の長男です。  本来は長女、長男、二女、三女でした。  私は彼と一度も会ったことがありません。  声を聞いたこともありません。   というのも、彼は私が生まれる前に、幼くして亡くなっているからです。  
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