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断片四 落花
「あたしとしたことが、しくじっちまったよ」
下腹部の急激な痛みの正体に気がついたオリツはそうつぶやいてしまった。
それは、朝から具合の悪かったオリツの容態を見かねたタツゾウが、荷物を半分よこせとオリツの荷物に手をかけようとした瞬間のことだった。
つぶやいてしまった瞬間、聞こえてしまったとオリツは思った。
察しのいいタツゾウのことだから今朝からのオリツの具合と、さっきのつぶやきでオリツが拵えてしまったことに気がついたはずだ。
タツゾウはオリツの前に回り込み、膨らんだオリツの下腹部を見て「孕み屋を呼べ」とシゲに言った。
朝からの不調の原因がわかったことと、幸か不幸か先に気づかれてしまったため言いづらいことを言う必要がなくなったことで安心してしまったのか、オリツは腰が抜けてその場にへたりこんでしまった。
タツゾウがオリツのところに今回の仕事の話を持ち込んだのは、巻髪で胎樹の落花が起こったという言卵が届いて半日ほど経ってのことだった。
「よう、オリツ、暇かい」
「なんだいタツゾウ、それは嫌味かい」
「そう、かっかするな、うまい話を持ってきたんだ」
落花の一報から半日経ってもサンジからの二報目は来ない。
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