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断片二 拵え
オリツの膨らんだ腹を見て、こいつは拵えてしまったなとタツゾウは思った。
すぐさま一番うしろを歩いていたシゲに「孕み屋を呼べ」と言った。そして孕み屋との合流場所も指示する。
「わかりました、行ってきます」
タツゾウの言葉を聞いてシゲは小走りに駆けていく。
「おう、頼む」
後ろ姿に声を掛けたあと、タツゾウは道端の木陰にオリツを座らせた。
「だから拵えなんか連れて行くなと言ったんだ」
と後ろで先頭を歩いていたチョウジが言う。
「今回の仕事にはオリツが必要だって言っただろう」
タツゾウの言葉に、チョウジはそうだったという表情をする。自分が無茶なことを言ってしまったことを理解したのだ。
「そうだった、すまねえ、しかし……わからねえのはなんで拵えちまったかってことだ。出かける前に念を押したじゃねえか、オリツによ」
確かにそうだった。オリツに今回の仕事の話を持ちかけたとき、タツゾウも拵えてないか念を押して確認したのだ。
そのときオリツは、いまは拵えてないと言った。
しかし、拵えにはときどき自分が拵えてしまっていることに気が付かない者もいると聞く。運の悪いことにオリツもそうだったのだろう。
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